念書は、ビジネスや日常のあらゆる場面で発生する金銭トラブルや信頼関係の確認に使われる文書です。相互に約束を文書化しておくことで、トラブルの時にも証拠として活用できます。
この記事では、実務経験から無料で使える念書テンプレートとその正しい使い方について解説します。
企業の人事担当として数多くの念書作成を監修してきた筆者が、用途別の活用ポイントやよくある失敗例、法的な注意点などを紹介します。
- 用途別テンプレート23種を一括/個別ダウンロード(Word・PDF)
- 最短で失敗しない書き方の5チェックと例文で即作成
- 念書/誓約書/覚書/契約書の違い・法的注意点・FAQを解説
→ ①用途で選ぶ(業務・労務/金銭・債務/謝罪ほか)
→ ②形式で選ぶ(Word・PDF)
→ ③例文を差し替え(金額/期限/方法を具体化)
用途別おすすめ早見表(DLリンク付き)
| カテゴリ | 主なテンプレート(代表例) | 形式 / 一括DL |
|---|---|---|
| 業務・労務 9 | 就業規則違反 / 退職(機密保持) / 無断欠勤の謝罪 / 服務規律違反 / ハラスメント再発防止 / 研修費・資格費返還 / 機密保持 / 競業避止 / アルバイト用誓約・損害賠償 |
形式:Word / PDF
|
| 金銭・債務 7 | 一般(汎用) / 借金返済(シンプル) / 借金返済(条件付) / 遅延損害金 / 慰謝料支払い / 連帯保証 / イベント・契約破棄(キャンセル料等) |
形式:Word / PDF
|
| 謝罪・その他 7 | 物品貸与・備品返還 / 未払い金支払い / 迷惑行為防止 / SNS投稿禁止・情報漏洩防止 / 未成年・親権者同意 / 不倫・交際トラブル / 賃貸借トラブル対応 |
形式:Word / PDF
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※ 運用は法令・就業規則・契約に適合させ、必要に応じて専門家にご確認ください。
業務・労務の念書テンプレート
※本テンプレートは一般例です。実際の運用は就業規則・懲戒規程・労働契約・個別事案により判断が異なります。過度な不利益条項や違法な損害賠償予定は無効となる場合があります。必要に応じて専門家へご相談ください。
就業規則違反時の念書
就業規則違反時の念書|指導・懲戒手続き前の誓約文例
就業規則違反時の念書(例文)
退職時の念書
退職時の念書|機密保持・個人情報保護の誓約
退職時の念書(例文)
無断欠勤の謝罪念書
無断欠勤の謝罪念書|再発防止・連絡ルール明確化
無断欠勤の念書(例文)
服務規律違反に関する念書
服務規律違反の念書|社内ルール遵守の誓約
服務規律違反に関する念書 例文
ハラスメント再発防止の念書
ハラスメント再発防止念書|セクハラ・パワハラ禁止
ハラスメント再発防止の念書 例文
研修費・資格費返還の念書
研修費・資格取得費用返還念書|自己都合退職時の取扱い
研修費・資格取得費用返還の念書 例文
機密保持に関する念書
機密保持念書|営業秘密・個人情報の保護
機密保持に関する念書 例文
競業避止義務に関する念書
競業避止義務の念書|範囲・地域・期間の明確化
競業避止義務に関する念書 例文
アルバイト用・損害賠償に関する念書
アルバイト用 損害賠償念書|過失・弁償の基準明記
アルバイト用・損害賠償に関する念書 例文
金銭・債務の念書テンプレート
一般的な念書
白紙フォーマットの念書
借金返済用念書(シンプル)
借金返済の念書(シンプル)|返済期日と支払方法の明記
借金返済の念書 例文(シンプル)
借金返済用念書(条件付)
借金返済の念書(条件付き)|分割・利息・期限の利益
借金返済の念書 例文(条件付き)
遅延損害金支払いの念書
遅延損害金の念書|年率・起算日・支払方法
遅延損害金に関する念書 例文
慰謝料支払い念書
慰謝料支払い念書|合意書・示談条項の履行
慰謝料支払いに関する念書 例文
連帯保証念書
連帯保証念書|主たる債務者と同一の責任
連帯保証に関する念書 例文
イベント・契約破棄(キャンセル料等)の念書
契約破棄・キャンセル料の念書|違約金・精算条件の明記
イベント・契約破棄(キャンセル料等)に関する念書 例文
謝罪・反省・その他の念書テンプレート
物品貸与・備品返還の念書
物品貸与・備品返還に関する念書 文例
物品貸与・備品返還に関する念書 例文
未払い金支払いの念書
未払い金支払い念書|支払期日・分割・遅延利息
未払い金支払いに関する念書 例文
迷惑行為防止の念書
迷惑行為防止念書|出入り禁止・接触禁止の遵守
迷惑行為防止に関する念書 例文
SNS投稿禁止・情報漏洩防止の念書
SNS投稿禁止・情報漏洩防止念書|機微情報の取扱い
SNS投稿禁止・情報漏洩防止に関する念書 例文
未成年・親権者同意の念書
未成年・親権者同意念書|法定代理人の承諾
未成年・親権者同意に関する念書 例文
不倫・交際トラブルの念書
不倫・交際トラブル念書|接触禁止・和解条項
不倫・交際トラブルに関する念書 例文
賃貸借トラブル対応の念書
賃貸借トラブル念書|原状回復・鍵返却・精算
賃貸借トラブル対応に関する念書 例文
念書とは?基本知識
念書は、当事者が合意した「約束・事実・ルール」を簡潔に書面化し、署名押印(サイン)によって後日のトラブルを防ぐ目的の文書です。契約書ほど条文が多くない場合や、指導・再発防止の確認、支払計画の明文化などに用いられます。
※本項は一般的な解説です。最終的な判断は個別の事情や社内規程、法令をご確認ください
念書の基本的な役割
- 合意内容の可視化:
「誰が・何を・いつまでに・どの方法で」行うかを明文化し、解釈のブレを防ぎます。 - 再発防止・指導記録:
就業規則違反やハラスメント等で、是正措置と再発防止策を当事者に確認させる時。 - 支払・精算の確認:
未払い金・分割返済・キャンセル料など、金銭の条件と期日を具体化します。 - 機密・行動ルールの徹底:
機密保持・SNS投稿制限・接触禁止など、守るべき行動規範を書面で共有する。 - 証拠化・内部統制:
署名日や当事者情報が残るため、後日の紛争時に“合意の存在と内容”を示すことができます。
念書の法的効力と注意点
- 私署証書としての効力:
当事者の署名(押印やサイン)があれば、原則として民事上の証拠力を持ちます。
※強制執行力はありません。未払いが想定される高額債権は、公正証書も検討。 - 内容が適法・合理的であること:
公序良俗違反、過度な違約金・損害賠償予定、労基法違反の賃金控除などは無効となるおそれがあります。 - 一方的・包括的すぎる条項の回避:
「一切の請求を放棄」「全面的な責任」など過度な条項は紛争時に争点化しやすいです。 - 具体性・特定性を確保:
金額・期日・場所・対象データ・禁止行為・期間・範囲などを具体的にし、曖昧な表現は避けます。 - 社内規程・契約との整合:
就業規則、懲戒規程、契約書、個人情報規程等と内容を矛盾させない。 - 署名方法・当事者確認:
自署/日付/当事者名・住所の記載。法人は名称+代表者名を明記。 - 保全と更新:
原本・控えの保管場所を定め、条件変更時は追補合意(差替え日・改定点)を残します。 - 専門家への相談:
高額・長期・人事労務リスクの高いケースは、弁護士や社労士等への事前相談が安全です。
念書・誓約書・契約書・公正証書の違い
念書には、似ている文書がありますが、文書の性質や効力、実務の使いどころは異なります。目的・リスク・金額の規模に応じて、どの様式を選ぶかを整理しておくと、紛争予防や回収実務がスムーズになります。(以下は一般解説です)
文書種別ごとの特徴
| 種別 | 目的・位置付け | 典型的な使い方 | 署名・形式 | 強制執行力 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| 念書 | 合意・事実・ルールの簡易な確認書。指導・再発防止、支払計画の明文化など。 | 就業規則違反の是正、未払い金の支払計画、機密保持・SNS制限の確認等。 | 当事者の署名(押印/サイン/電子署名)。証拠化が主目的。 | なし | 簡易・迅速に合意を残したい/社内運用中心 |
| 誓約書 | 当事者が一方的に「こうします/しません」と誓う宣誓書。 | 入社時の守秘・競業避止、機器持出ルール、コンプライアンス遵守の宣誓等。 | 本人の署名(+会社が受領)。条文は念書より行動規範寄り。 | なし | 行動ルールの徹底/再発防止の意思表明 |
| 契約書 | 双務(または片務)の権利義務を体系的に定める基本書面。 | 売買・業務委託・賃貸借・秘密保持契約(NDA)などの本契約。 | 双方署名。条文体系(定義・目的・対価・責任・解除等)を整備。 | なし(※債務名義化は別途手続) | 金額・期間・リスクが一定以上/継続取引 |
| 公正証書 | 公証人が関与し作成する公文書。執行認諾文言で債務名義化可。 | 金銭消費貸借・養育費・解決金の分割払い等、未払い時の迅速回収が必要な合意。 | 公証役場で作成。本人確認・手数料・原本保管あり。 | あり(執行認諾条項付き) | 高額・長期・不履行リスクが高い支払合意 |
- ポイント:「証拠」にするだけなら念書や誓約書でも足りるが、回収までの金銭合意は公正証書(執行認諾)を検討。
- 整合性:念書・誓約書は、既存の契約書・就業規則と矛盾がないことが重要。
よくある誤用・使い分け
- 念書だけで「違反時に即差押えできる」と誤解:
念書・誓約書には強制執行力がありません。高額債権や分割合意は公正証書を検討します。 - 誓約書で過度な包括条項:
「一切の責任を負う」「一切の請求権放棄」などは無効。範囲・期間・対象を合理的に特定します。 - NDAが必要な場面で念書のみ:
機密の授受が前提なら契約書(NDA)が適切です。念書は簡易確認用とする。 - 社内是正なのに重厚な契約書:
軽微・短期の再発防止は念書/誓約書で十分なことが多い。過剰な事務負担は現場運用によくありません。 - 競業避止の期間・地域が広すぎる:
職業選択の自由に配慮し、合理的範囲(職種・地域・期間)に限定。対価も検討します。 - 未払い代金の分割合意をメールにする:
メールは証拠性が弱いため、最低限署名付き念書、可能なら公正証書。
- 未払いのリスクがある→ 公正証書を優先検討
- 継続取引のルール化 → 契約書
- 行動規範や是正の宣誓 → 誓約書
- 簡易な確認・支払計画 → 念書
※最終的な形式選択は、金額規模・継続性・不履行時の想定対応・社内規程との整合で判断してください。重要案件は専門家へ相談が確実です。
念書の正しい書き方・手順
念書は、法的な形式に縛られすぎず、要点を明確に整理して書くことが重要です。ここでは、実務で使いやすく信頼性のある念書を作るための基本ステップと、注意すべきポイントをまとめました。
念書作成の手順(ステップガイド)
以下の順で念書作成を進めると短時間で抜け漏れのリスクが少なくなります。
- 目的を明確にする:
「支払い確認」「再発防止」「行動誓約」など、何のために書くのかを最初に整理します。 - 当事者を特定:
氏名・住所・会社名・役職など、責任の所在を明確にします。 - 合意・約束内容を具体的に:
「何を」「いつまでに」「どのように」実行するかを具体的に記載します。 - 違反時の対応を記す:
再発時の処分・支払い遅延時の対応など、実務的なルールを明記。 - 日付・署名・押印:
作成日と署名(自署)を必ず入れ、法人の場合は代表者印や社印も添えます。 - 控えを双方で保管:
原本・写しをそれぞれが保有し、後日の確認や証拠とします。
必要項目と記載例
当事者・合意内容・期日・支払方法(該当時)・違反時の取り扱い・署名押印・作成日が基本です。ひな形を参考に漏れを防ぎます。
| 項目 | 内容例 | ポイント |
|---|---|---|
| タイトル | 念書 | 中央に配置。文書の目的を明確にします。 |
| 宛名 | 株式会社〇〇 代表取締役 〇〇様 | 提出先・相手方の正式名称を記載。 |
| 本文 | このたび〇〇の件でご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。再発防止のため、以下の事項を厳守いたします。… | 目的・内容・対応策を簡潔に3〜5文でまとめます。 |
| 期日・金額 | 〇年〇月〇日までに、金〇〇円をお支払いします。 | 数字はすべて具体的に(曖昧表現は避ける)。 |
| 署名・押印 | 住所・氏名・押印 | 自署が最も重要。印影はシャチハタ不可。 |
書き方の注意点・ポイント
誰が・何を・いつまでに・どの方法で行うかを明確にし、例外や違反時の取り扱いまで一貫したルールで記載します。
- 曖昧な表現を避ける:
「できる限り」「可能な範囲で」などは実務では曖昧。明確な期限・金額・範囲で記載。 - 感情的な表現を入れすぎない:
「深く反省しています」などは冒頭1回程度にとどめ、事実と約束を中心に。 - 違約時の措置は現実的に:
罰則を重くしすぎると無効のリスクも。実行可能な条件にとどめる。 - 複数名が関与する場合:
立会人・保証人・上司などの署名欄で信頼性が高まります。 - 文体は「です・ます調」で統一:
ビジネス・法的文書では丁寧かつ簡潔な言い回しが望ましい。
手書きで作成する場合の例
急ぎの場面や相手の信頼性を高めたいときは、手書きの念書が有効です。最低限の体裁と訂正方法を押さえて作成しましょう。
念 書
私は、令和7年3月5日に発生した接客対応の不備について深く反省し、今後は同様の行為を繰り返さないよう誓約いたします。
以上のとおり、再発防止に努めることをここに誓います。令和7年3月6日
東京都〇〇区〇〇1-2-3
山田 太郎 印
手書きの場合は、修正液・消しゴム跡を避け、日付と署名を必ず記入します。読みやすい楷書体で書くと信頼性が高まります。
個人間で使う場合のポイント
知人・家族間でも後日のトラブル防止には書面化が有効です。金額・期日・支払方法など争点化しやすい事実を具体化しましょう。
- 貸し借り・返済・慰謝料などの金銭関係:
金額・期日・方法を具体的に書く。メール・口約束は避ける。 - 署名は必ず自筆:
自筆以外(パソコンなど)の署名は紛争時に「本人確認」が難しくなります。 - 連帯保証や代理人の署名:
保証人・立会人欄を別に設け、本人の意思を明確化。 - トラブル防止には第三者確認:
証人の署名を入れるか、公証役場で「確定日付」を取ると確実。 - コピーを保管:
両者が同内容の控えを1部ずつ持ち、破棄や紛失に備えます。
よくある失敗例と対策
念書は簡易に作成できる反面、内容が曖昧だったり形式を欠いていると、いざというときに「証拠として使えない」「効力が弱い」と判断されることがあります。ここでは、実務で起こりやすい失敗パターンと、すぐに実践できる対策を整理します。
曖昧な内容による無効事例
「できる限り」「なるべく」など抽象表現は避けてください。数量・金額・期日・基準を数値や固有名で特定しましょう。
- ×「できるだけ早く支払います」:期限が特定されず履行時期が不明。
→ 〇「令和7年3月末日までに金〇円を〇口座へ振込」のように具体化。 - ×「再発しないよう努めます」:努力義務は効果が曖昧。
→ 〇「再発防止のため、上長確認を経て行動します」など、手段を明記。 - ×「内容に異議ありません」:前提となる条件や金額が不明だと無効化の恐れ。
→ 具体的な「合意事項」を本文内に書き出す。
署名・日付の不備対策
自筆署名と作成日を必ず記載し、訂正は二重線+訂正印で明確化。複数ページは通し番号と契印で改ざんを防止します。
- 署名欄が空欄:
「印だけ」では本人確認が難しい。必ず自署+押印(サイン)を。 - 日付未記入:
作成時期が争われると、合意の有効性が不明確になります。
→ 「作成年月日」「効力発生日」を別欄で記載しておくと安心。 - 複数ページの場合:
ページ間に契印を押して改ざん防止。電子文書はPDF一体化+電子署名で対応。
違法条件記載の注意点
過度な違約金や一方的な不利益は無効の恐れがあります。就業規則・法令・公序良俗に適合する範囲で条項を設計しましょう。
- 労働法違反:
「給与から弁償金を控除」「退職時に罰金」などは労基法違反の可能性。 - 過度な違約金:
「違反時は100万円支払う」など合理性を欠く金額設定は公序良俗違反により無効。 - 個人情報・秘密保持:
守秘義務は必要最小限に。過剰な範囲指定(永続的・全業種禁止)は職業選択の自由侵害に当たることがあります。 - 対策:
就業規則・社内規程・契約書と整合を取り、疑問がある場合は専門家確認を。
保管方法・紛失対策
当事者で各1部を原本保管し、写しをスキャンし保存します。授受記録や割印で真正性を担保し、アクセス権限を限定します。
- 原本は鍵付き保管:紙文書は個人情報書類扱いとして管理し、社内のアクセス権限を制限。
- スキャン保存:PDFで電子化してクラウド/NAS等にバックアップ。
- ファイル名ルール:「念書_氏名_日付.pdf」のように検索しやすく統一。
- 改訂・差替え:条件変更時は古い版を残して「改訂履歴」または「追補念書」を作成。
念書作成チェックリスト
締結前に以下のチェックリストで確認しましょう。
- 目的(支払確認/再発防止/誓約など)が明確になっている
- 当事者・住所・日付・署名が正確に記載されている
- 内容が具体的で曖昧表現がない
- 金額・期日・方法など数値項目は全て特定されている
- 就業規則・契約内容と矛盾していない
- 違法・過剰な条項が含まれていない
- 双方に控えを残している(紙・PDFいずれも)
- テンプレートのままではなく、実情に合わせて修正している
よくある質問(FAQ)
関連リンク(状況別に選ぶ)
参考にできる公式資料
念書そのものに直接的なひな形はありませんが、念書の作成にかかわる民法や労働基準法などの関連法令をチェックしておきましょう。
まとめ
念書は、金銭や労務などのトラブル防止や証拠保全に活用できる実用的な文書です。テンプレートを活用することで、最初から作るよりも効率的に作成できます。
ダウンロード可能なテンプレートは、実務経験をもとに用途ごとに設計されています。必要に応じてカスタマイズしてお使いください。






















