予算書は、企業や団体、個人事業主にとって1年間の資金計画を可視化し、経営判断を支えます。適切な予算書を作成することで、収支のバランスを保ち、資金繰りの安定化や無駄な支出の抑制につながります。
当ページでは、実務経験をもとに作成した無料エクセルテンプレートを配布し、作り方・書き方のコツや活用方法をわかりやすく解説します。
予算書とは?目的と役割
予算書は、1年間の収入・支出の見込みを数値化し、資金計画を明確にするための文書です。作成することで、投資・採用・経費削減などの方針決定がスムーズになります。
予算書(予算案)テンプレート一覧【無料ダウンロード】
フォーマットや書式は自由ですが、目的や用途に合わせて最適なレイアウトを選ぶことが重要です。ここではA4縦型・A4横型の2種類の構成を紹介します。
A4縦タイプ
A4横タイプ
予算書の書き方(3ステップ)
予算書は「来期(または今期)の売上・費用・投資の見込み」を整理する計画表です。初めて作る場合は、
の順で作ると迷いません。
ステップ1:目的と単位を決める(年度/四半期/月次・部門/案件)
やること(まず全体設計)
- 期間の粒度を決める:
年度+月次配分(推奨)/四半期でもOK - 対象の粒度を決める:
全社/部門(営業・製造・管理)/プロジェクト・案件/商品別 - 見たい指標を決める:
売上・粗利・営業利益・キャッシュ着地(どこまで管理するか)
「2026年度の全社予算を月次作成。部門ごとに損益を見える化」
迷ったら:
まずは「全社 × 月次」から開始 → 慣れたら部門や案件の軸を追加
ステップ2:項目を設計する(収益/費用/投資/人件費/固定変動)
Excelの列(最小構成のおすすめ)
- 月/部門/品目(任意)
- 数量/単価/売上高(数量×単価)
- 売上原価(仕入・材料・外注)
- 販管費(広告費・物流費・手数料・家賃・通信 など)
- 人件費(人数×平均コスト:基本給・賞与・法定福利)
- 減価償却費(設備・ソフトの投資を年数で按分)
- 合計費用/粗利/営業利益
月|部門|品目|数量|単価|売上高|仕入|外注|広告|物流|人件費|家賃|通信|減価償却|合計費用|粗利|営業利益
- 固定費/変動費に区分すると、後の差異分析がラク
(例:家賃=固定、仕入=変動) - 最初は項目を少なく、運用しながら細分化していくのがコツ
ステップ3:見込み根拠と配賦ルールを明文化
書いておくべきメモ(運用が強くなる)
- 見込み根拠:
案件パイプライン、過去実績の季節性、価格改定、原材料指数、為替前提 など - 配賦ルール:
管理部門費は「人数比/売上比/工数比」など基準を明記、製造間接費は「機械時間/工数」 - 入出金サイト:
請求月・入金月・支払月を列で管理(資金繰り表と連動) - 予実差異欄:
月次で「予算→実績→差異→対策」を回すための「差異」「数量差」「単価差」「コメント」列
「売上:主要3顧客×平均単価。新製品は6月開始で数量+20%」「材料費:市況+5%を反映」「配賦:総務費は人数比」
予算書の「必須項目」と定義
最初は「何をどこまで入れるか」を統一すると、作成も運用もスムーズになります。下の表は、予算書作成時に最低限そろえておきたい基本項目と、入力時の注意点をまとめたものです。
項目 | 意味(かんたん定義) | 入力の注意(ミス防止のコツ) |
---|---|---|
売上高 | 商品やサービスを売って得られる金額 | 必ず数量×単価で根拠を残す。繁忙期/閑散期は月ごと配分で季節性を反映 |
売上原価 | 売上に直接かかった費用(仕入/材料/外注など) | 内訳を分けて入力(材料・外注・仕入)。固定費と混ぜない。単価前提の変更は注記 |
販管費 | 運営のための間接費(広告、物流、家賃、通信など) | 人件費は別管理にすると見やすい。広告費は施策別に分け、効果検証しやすく |
設備投資 | PCや機械、ソフトなど資産の購入に使うお金 | 開始月・金額・耐用年数を明記し、減価償却費に自動反映(式で管理) |
キャッシュ | 入金・支払いのタイミングによる資金の増減 | 請求月/入金月/支払月の列を用意し、資金繰り表とVLOOKUP/INDEXで連動 |
- 固定費/変動費を区分で持つと分析が楽です。(家賃=固定、仕入=変動など)
- 人件費は人数×平均コストで見込み、賞与・法定福利を別列に。
- 「根拠」や「前提」(為替・物価・価格改定)を残すと後で便利です。
用途別の作り方(企業/非営利/個人事業/イベント)
同じ「予算書」でも、業種や目的で見るべきポイントが少しずつ違います。自分の用途に合う作り方のコツを押さておきましょう。
中小企業:部門/プロジェクト別の配賦とKPI連動
- 管理軸:
全社→部門→プロジェクト(案件)の順に細分化。配賦は人数比/売上比/工数比で統一 - KPI連動:
営業はリード数/成約率、製造は稼働率/不良率など、先行指標を列で持つ - 予実運用:
月次で差異を数量差/単価差/タイミング差に分解し、対策コメントまで記入
非営利/学校:科目の統一・助成金/会費の扱い
- 科目の標準化:
勘定科目の名称・並び順を年度で固定し、比較しやすく - 収入区分:
会費・寄付・助成金・補助金は用途制限の有無を列で管理 - 事業別管理:
行事/プログラム単位で収支を分け、目的別の使途が追えるように
個人事業主:現金主義の月次運用と税務を意識
- シンプル設計:
売上・外注・交通通信・サブスク・地代家賃・税/社保で最小構成 - 現金主義:
請求月と入金月を分け、入金サイトを管理(資金ショート防止) - 税対応:
減価償却、予定納税、保険/年金を月割りで計上しブレを小さく
例:「6月Mac購入→4年償却」「SaaS年払い→月次按分」などを注記列に。
イベント運営:一回完結型の原価と収支着地管理
- 原価の前倒し把握:
会場費・印刷物・人件費・外注を見積根拠付きで入力 - 売上の見込み:
参加者数×単価。早割/当日/スポンサーを区分して管理 - 着地管理:
開催前後で実績を差し替え、差異理由(集客・単価・天候等)をコメント
例:スポンサー3枠×10万円、早割100名×3,000円、当日200名×4,000円で売上計画。
予算管理を効率化するための活用ポイント
事業計画書や資金繰り表との連携
予算書は単体で活用するだけでなく、事業計画書・資金繰り表・決算書と併せて管理することで、より精度の高い経営判断が可能になります。
特に資金繰り表と組み合わせると、予算と実績の差異分析やキャッシュフロー予測がスムーズに行えます。
予算書テンプレートのよくある質問
まとめ
予算書は、1年間の収入や支出の計画を立てることで、通常は新しい期が始まる前に作成します。予算書を作成することで、今期の会社の人員計画や、設備投資など全体の方向性を決めることができます。
今回は、A4縦タイプとA4横タイプの5種類の予算書テンプレートを紹介しました。項目は、どれも大きくは違わないので自社の予算を立てやすいテンプレートを選んでください。