価格改定の通知は、書き方ひとつで取引先の反応がまるで変わります。「また値上げか」で終わるか、「まあ仕方ないな」と思ってもらえるか——その差は、文書の丁寧さより、伝え方の順番にあることが多いです。
このページでは、製造業・小売業の現場で実際に使ってきた文例をもとに、状況別の価格改定のお知らせテンプレートをまとめています。
雛形をそのまま貼り付けるだけでなく、相手に誠意が伝わる言い回しや、値上げの背景を納得してもらうための構成についても、あわせて触れています。
価格改定のお知らせは、もっとも問い合わせが入りやすい文書のひとつです。原材料費の上昇率など、具体的な数字や外部データを添えるだけで、先方の反応がずいぶん変わります。
「なぜこのタイミングで?」という疑問に先回りして答えておくことが、トラブルを減らす一番の近道だと感じています。
値上げ・価格改定テンプレート
Excel・Word形式のテンプレートを以下から無料でダウンロードできます。そのまま使えるものもありますし、自社用に少し手を入れて使うのも簡単です。
原材料・人件費の高騰による値上げ通知
円安や世界情勢の影響で原材料・人件費が上がり続けているなかで、価格改定を検討している食品メーカー・食品卸業向けのテンプレートです。「自社だけの話ではなく、外部環境によるものだ」と丁寧に伝えることで、取引先の反応がかなり変わります。
・改定対象商品ごとに「原料名」「原価率の推移」欄を追加
・「原油高騰」「物流費上昇」など要因ごとの背景説明を追記
・改定前と改定後の比較表に「値上げ幅の%」も表示
・改定後の価格に「税込・税別」の表記を統一して記載
・取引先専用の問い合わせ窓口(担当者名・電話番号)を明記
価格改定の別紙があるパターン
「コスト削減には取り組んだが、それでも追いつかなかった」——そういう状況を取引先に正直に伝えたいときのテンプレートです。
自社の努力をどこかに入れておくだけで、受け取る側の印象はかなり変わります。一方的な値上げ通知にならないための、ちょっとした工夫です。
・「改定対象商品一覧」をExcel別紙として添付できる構成に変更
・通知文内に「別紙価格表参照」と明記して誘導
・別紙に改定前後の価格だけでなく「価格据え置き商品」も記載
・価格表の末尾に「値上げ理由の補足説明欄」を追加
・商品コード順や売上高順に並べ替え可能な表形式に対応
価格改定のお知らせ 例文(業種別・状況別)
価格改定の通知は、相手が法人の取引先か一般消費者かで、文体も構成もかなり変わります。改定幅が大きいほど説明の比重も増やしたほうがいいです。
以下に業種・状況ごとの例文をまとめました。日付・対象商品・開始日・価格表記は、それぞれ自社の内容に合わせて書き換えてください。
- 冒頭は感謝と状況説明を一文でまとめる。長々と書くと読まれなくなります
- 値上げの理由は「外部の話」と「自社でも努力したけど追いつかなかった」をセットにすると、相手が受け入れやすい
- 開始日・対象範囲・改定幅・税込税別のどれかが欠けると、問い合わせが一気に増えます
- 問い合わせ先と、もし据え置き品やセット割があれば、さらっと添えておくだけで印象が違います
製造業(BtoB・正式通知)
取引先への正式通知を想定した、いわゆる公文書スタイルです。
発注や見積、納期にも直結する内容なので、適用開始日と対象範囲はできるだけ具体的に書いてください。口頭ではすでに伝えていたとしても、この書面が出て初めて「正式確定」という扱いになります。
お取引先各位
営業本部 〇〇部
平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。昨今の原材料費・エネルギーコストおよび物流費の高止まりに対し、当社では工程改善や歩留まり向上等のコスト吸収に努めてまいりましたが、企業努力のみでは現行価格の維持が困難な状況となりました。
つきましては誠に遺憾ながら、下記の通り価格を改定させていただきます。
- 対象商品:〇〇シリーズ
- 改定内容:現行比 +〇%
- 適用開始日:令和〇年〇月〇日受注分より
- 表記:税別価格
今後も品質と供給の安定に一層努めてまいります。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
食品・飲料(原料高騰/小売向け)
原料名や相場に一言触れるだけで、値上げの背景がずっと伝わりやすくなります。消費者向けの場合は、細かい数字より「なぜ今のタイミングなのか」をわかりやすく説明するほうが、読んでもらえます。
平素より当社製品をご愛顧いただき誠にありがとうございます。主要原料である「〇〇(例:小麦・砂糖)」の国際相場および国内調達コストの上昇が続いており、配合や製法の見直し、物流ルートの改善など、価格を据え置くための取り組みを続けてまいりましたが、このたびの改定に至りました。
誠に恐縮ですが、下記の通り価格を改定いたします。
- 対象:〇〇パン各種、〇〇ビスケット各種
- 改定幅:希望小売価格で+〇%(税込)
- 実施日:令和〇年〇月〇日出荷分より
引き続き品質の維持・向上に努めてまいります。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
小売・EC(物流費・人件費/顧客向けメール)
既存顧客へのメール配信を想定した文面です。値上げの通知でも、いつも利用してくれている相手には少し柔らかいトーンで書いたほうが、ちゃんと読まれます。
対象商品の確認先と問い合わせ窓口は、文中のどこかに必ず入れておいてください。
いつも〇〇ストアをご利用いただきありがとうございます。昨今の配送コストの上昇および人件費の増加により、誠に心苦しいのですが、一部商品の価格を〇月〇日より改定させていただきます。
対象商品は商品ページ内に「改定予定」ラベルを表示しております。ご不明点はチャットサポートまたは support@example.jp までご連絡ください。ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
サブスク・サービス(SaaS/月額プラン)
「いつから上がるのか」が明確だと、ユーザーの不安がかなり和らぎます。
据え置き期間を明記しておくのはそのためです。解約手順を自分から案内するのは勇気がいるように感じますが、隠さないほうが長期的な信頼につながることの方が多いです。
日頃より〇〇サービスをご利用いただきありがとうございます。インフラ費用・セキュリティ投資・サポート体制強化に伴い、〇月〇日より月額料金を下記の通り改定いたします。
- スタンダード:現行〇〇円 → 新料金〇〇円(税込)
- プロ:現行〇〇円 → 新料金〇〇円(税込)
- 適用開始:〇年〇月〇日更新タイミングから
- 既存ユーザー特典:改定後も〇ヶ月間は現行料金を据え置き
プラン変更・解約は「アカウント設定>プラン管理」からいつでも可能です。引き続き価値向上に努めてまいりますので、ご理解を賜れますと幸いです。
軽微改定(5%未満/お願いトーン)
5%未満の改定なら、長々と説明するより「お願いします」と率直に伝えるほうが読み手には自然に届きます。理由は一行で十分。むしろ言い訳が多いほど、受け取る側は「何か大きな値上げが来るのでは」と構えてしまいます。
平素より当店をご利用いただきありがとうございます。仕入・配送コストの上昇に伴い、誠に恐れ入りますが、対象商品の価格を平均で<5%未満>の範囲で見直しさせていただきます(実施日:〇/〇)。
引き続きご満足いただける品質とサービス提供に努めてまいりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
別紙価格表同封(品目多数)
対象商品が10品目を超えてくると、本文に全部書こうとするのはやめたほうがいいです。読みにくくなりますし、価格を差し替えるときのミスも増えます。本文は簡潔にまとめて、詳細は別紙——これが現場ではいちばんうまく回ります。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。原材料および物流コストの上昇により、誠に不本意ながら同封の別紙の通り価格を改定いたします。適用開始日は令和〇年〇月〇日、税別表記でございます。
対象・改定幅の詳細は「別紙:改定対象商品一覧」をご確認ください。
据え置き対象を明記(配慮を可視化)
「全部上がるわけじゃないんだ」と思ってもらえるだけで、受け取った相手の反応がかなり変わります。実際に、据え置き品を明記しただけで問い合わせの電話がほぼなくなった、という話はよく聞きます。
日頃より当社製品をご愛顧いただきありがとうございます。コスト上昇を受け、一部商品の価格を〇月〇日より改定いたします。一方で、主力の〇〇シリーズについては引き続き据え置きといたします。対象と改定幅の一覧は別紙をご確認ください。
引き続きお客様のご負担を最小限に抑えるべく努めてまいります。
店頭・掲示用(短文ポップ)
店頭掲示はとにかく短く、一目で分かることが最優先です。理由と実施日と確認方法の3点だけ押さえれば十分です。
原材料・物流コストの上昇により、〇/〇より一部商品の価格を見直します。ご理解のほどよろしくお願いいたします。対象商品は棚札シール「新価格」表示をご確認ください。
チェックリスト(例文差し替え時の最終確認)
- 改定開始日・対象商品・改定幅(率または金額)が本文か別紙のどちらかに必ずある
- 税込・税別の表記が文書内で統一されている(混在は混乱のもと)
- 問い合わせ先に部署名・担当者名・連絡先がそろっている
- 既存顧客への配慮(据え置き期間・割引など)を入れるかどうか判断した
- メール配信の場合、件名に「価格改定」と実施日が入っている(開封率に直結します)
現場でよく見る、価格改定通知の失敗パターン
- 開始日が書いていない
「いつから?」の問い合わせが一番多いミスです。受注ベースか出荷ベースかも明記すると確実です - 税込・税別の表記が混在している
文中と別紙で表記が違うと、受け取った側が正しい価格を判断できません - 値上げの理由が一言だけ
「コスト上昇のため」だけでは、相手は納得より疑問を持ちます。外部要因と自社の対応努力をセットで伝えるのが基本です - 通知口調になっていて、お願いする姿勢がない
値上げは一方的な事実でも、文面は協力を求めるものです。特に長年の取引先ほど、この差が関係に響きます
よくある質問(FAQ)
関連リンク
価格改定の通知に説得力を持たせるには、「感覚的なコスト上昇」ではなく、公的なデータを根拠として示すことが有効です。取引先が社内で承認を取る際にも、数字があるかどうかで話が通りやすさが変わります。
資源エネルギー庁が公開している「今後の小売政策について」は、燃料・スポット・先物の各価格推移が整理されており、値上げ通知の根拠資料として引用しやすい内容です。
「外部データに基づく判断である」ことを示したいときに、そのまま出典として使えます。
総務省統計局の消費者物価指数で、品目別に前月比や前年同月比の値上がり率などがわかります。
消費者物価指数 - 総務省統計局
財務局調査による「賃金等の動向」についての資料で、地域別の賃金引上げ状況などがわかります。
賃金等の動向 - 財務省
まとめ
価格改定の通知でいちばん難しいのは、値上げをどう説明するかより、「まあ仕方ない」と相手に思ってもらえる流れをどうつくるか、という点だと思っています。
理由は具体的なほど伝わりやすく、文面が一方的なほど関係にじわじわ響いてきます。
ここで紹介した例文やテンプレートは、そのまま送るより、自社の状況や相手との関係性に合わせて一言足したり削ったりして使った方が、受け取る側に届きやすくなります。
使い方に迷ったら、「自分が受け取ったらどう感じるか」を一度確認してみてください。
■ 最終更新日



