システム開発において、最初のステップである要件定義書の作成は、プロジェクトの成否を大きく左右します。
私は過去に複数のシステム開発プロジェクトに携わり、要件定義の不備のせいでスケジュール遅延や追加コストが発生するケースを数多く見てきました。
この記事では、過去の経験に基づいた要件定義書テンプレートの使い方、作成の流れ、成果物の具体例を解説します。Excel・Wordの無料テンプレートもダウンロードできますので、実務にすぐ活用できます。
要件定義書テンプレートの無料ダウンロード
要件定義書のサンプルテンプレートを紹介します。要件定義書は進めるプロジェクトによって実際に記載する項目はことなるので、フォーマットのサンプルとして必要部分を参考にしてください。
Excel版テンプレート
Excelで作成した要件定義書テンプレートです。表紙・目次・基本フレームを収録しており、図表や一覧の作成が容易です。実務ではワードと併用するケースが多いです。
Word版テンプレート
Wordで作成した要件定義書テンプレートです。表紙・目次・各章タイトルを収録しています。詳細な書き方は別途作成が必要ですが、構成のひな型として有効です。
※ ワードでは、画面レイアウトや一覧表を書くのが難しいのでエクセルと併用するのが効率的でしょう。
要件定義とは何か
要件定義とは、システム開発において「何を実現するか」を明確にする作業です。顧客やユーザー企業からヒアリングを行い、目的・範囲・機能要件・非機能要件などを整理して合意形成を行います。
要件定義書とは
要件定義書は、確定した要件を文書化したものです。システム全体像や目的、対象業務、方式などを記載し、開発プロジェクトの基盤となります。
要件定義の成果物
要件定義では、以下のような成果物が一般的に作成されます。
背景、目的、範囲、現行業務フロー、将来業務フロー
機能要件:
画面一覧、帳票一覧、外部連携方式、データ定義書、テーブル定義
非機能要件:
性能、拡張性、セキュリティ、運用・保守、教育・引継ぎ
要件定義と基本設計の違い
要件定義は「何を実現するか」、基本設計は「どのように実現するか」に焦点を当てると考えるとわかりやすいです。
要件定義の成果物は要件定義書、基本設計の成果物は基本設計書です。
要件定義の失敗例と実務経験コメント
要件定義はシステム開発の成功を左右する重要な工程ですが、現場では同じ失敗が繰り返されることが少なくありません。ここでは、過去の現場で実際に起こった
「失敗例」と「注意すべきポイント」を紹介します。
よくある失敗例
ユーザー企業が「とりあえず便利にしたい」としか伝えず、開発者も具体化せずに要件定義を進めた結果、後から機能追加が多発し、スケジュールとコストが大幅に膨らみました。
失敗例2:関係部署の意見が反映されていない
実際にシステムを使う現場担当者の意見を聞かずに要件をまとめたため、導入後に「業務に合わない」と不満が続出しました。結果として再開発が必要になり、二重コストとなりました。
失敗例3:非機能要件を軽視
「画面の機能」だけに集中し、セキュリティや処理速度、運用負荷といった非機能要件を後回しにした結果、システム導入後に性能不足やセキュリティリスクが発覚しました。
実務経験からのコメント
私が携わった案件では、要件定義段階での抜け漏れが原因で手戻りが発生するケースがありました。特に「ユーザーが本当に求めていること」と「言葉にした要望」にはズレがあることが多く、ヒアリングでは潜在的なニーズを掘り下げることが重要になってきます。
また、要件定義書は「形式的に承認をもらえばよい」わけではなく、関係者全員が内容を理解して合意することが大切です。承認の場で丁寧に説明し、疑問を解消しておくと後工程がスムーズに進みます。
要件定義は地味に見えますが、ここで丁寧に時間をかけた案件ほど、開発後のトラブルが少なく満足度も高くなるという実感があります。
よくある質問(FAQ)
要件定義書の参考リンク
総務省のパッケージソフトを開発する際の要件定義書の必要項目を記載したPDF文書です。一般的な要件定義書の項目がすべて記載されているので特に官公庁向けに必要な項目がわかります。書き方のサンプルもあるので、学習用にもいいでしょう。
総務省:パッケージソフトに対する要件定義書のサンプル
要件定義に関連の深いシステム開発のテンプレートについても以下で紹介してます。