会計担当者や個人事業主の方が月次業務を効率化できるよう、現場で実際に運用しているフォーマットと手順を整理しました。
簿記の基本(仕訳帳→総勘定元帳→試算表)に沿って、残高試算表・合計試算表・合計残高試算表の違いと使い分け、Excelテンプレートの活用ポイント、チェックリストまで具体的に解説します。
試算表とは
試算表は、総勘定元帳の転記結果が正しいかを検証し、貸借の合計が一致しているかを確認する一覧表です。
月末や期末に作成し、決算書の作成前にエラーや不整合を発見します。簿記・会計の基礎確認だけでなく、部門別やプロジェクト別の管理、予実差異の早期把握にも役立ちます。
試算表で確認できること
- 仕訳の記録漏れ・金額誤り・転記ミスの検知
- 勘定科目・補助科目の残高整合性
- 貸借合計の一致(検算)
- 決算整理前後の残高推移の把握
試算表の種類
試算表には主に次の3種類があり、用途が異なります。
残高試算表
各勘定科目の期末残高を一覧で確認します。貸借の合計が一致するかを検証し、決算書作成の前提となる残高を素早くチェックできます。
合計試算表
一定期間の借方合計と貸方合計を科目ごとに表示します。期間内の取引が正しく記録・転記されているかを検証するのに適しています。
合計残高試算表
合計(期間合計)と残高(期末残高)を同一表で把握できます。月次レビューや部門別分析など、運用現場で最も使い勝手が良い形式です。
試算表テンプレート(無料ダウンロード)
実務ですぐ使えるExcelテンプレートを用意しました。数式で自動集計し、貸借一致の検算セルも配置しています。
残高試算表テンプレート
合計試算表テンプレート
合計残高試算表テンプレート
Excelテンプレートの使い方と作り方
Excelの試算表テンプレートで、財務管理の効率を向上させることができます。
1. 初期設定(勘定科目・補助科目・部門)
- 勘定科目マスタに自社の科目名・科目コードを登録します
- 必要に応じて補助科目(得意先・仕入先・製品など)と部門・プロジェクト列を有効化します
- 消費税区分(課税・非課税・対象外)を列で管理すると後工程が楽になります
2. データ投入(仕訳帳→元帳→試算表)
- 仕訳帳へ日付・伝票No・摘要・借方科目/金額・貸方科目/金額を入力します
- ピボットやSUMIFで総勘定元帳へ転記し、試算表に集計します
- テンプレートの検算セルで貸借一致を確認します
3. カスタマイズ(関数・書式・印刷)
- SUMIFS/VLOOKUP/XLOOKUPで科目集計を自動化します
- 部門別や案件別のフィルタを追加し、月次レビューに使いやすくします
- 印刷は余白狭め・改ページプレビューで1~2ページに収めると閲覧性が上がります
月次締めのチェックリスト
月次決算をスムーズに進めるためには、勘定科目の突合や貸借一致の確認を確実に行うことが大切です。
試算表を活用してチェックを体系化することで、漏れやミスを防ぎ、正確な財務状況を把握できます。以下に、実務で役立つチェックポイントをまとめました。
- 貸借合計が一致している
- 現預金・売掛金・買掛金など主要勘定の内訳が元帳と突合済み
- 貸倒引当金・減価償却費などの見積計上の妥当性をレビュー
- 消費税区分の誤りがない(課税区分と税率が正しい)
- 決算整理仕訳の前後で残高が意図通りに推移している
よくあるミスと対処法
借方・貸方の入力反転
摘要と金額の整合が崩れていないかをフィルタで確認します。仕訳帳で借貸の差額が発生する場合は赤背景などの条件付き書式で即時検知します。
科目ブレ(名称ゆらぎ)
売掛金と売掛など名称が混在すると集計が割れます。科目コード運用に切り替え、入力はプルダウン選択にします。
消費税区分の誤り
税込・税抜の混在や税率違いは集計崩れの典型です。税区分列を必須にし、選択肢を固定(データの入力規則)します。
補助科目未設定
得意先別の突合ができなくなります。補助科目を必須にし、未入力は保存できないルールにします。
運用をラクにする小ワザ
- テンプレートに検算シグナル(貸借不一致で色が変わるセル)を常設
- 月次タブをコピーしてyyyymmで履歴管理、年間推移グラフを自動更新
- 部門・案件・担当者のスライサーでレビューを可視化
- 仕訳帳の摘要から頻出語を抽出し、誤記・重複処理を洗い出す
よくある質問(FAQ)
まとめ
試算表は、残高試算表・合計試算表・合計残高試算表の3種類があり、いずれも財務状況の確認や貸借一致の検証に欠かせないツールです。
Excelの試算表テンプレートを使えば、自動計算や部門別管理が可能になり、月次決算や会計処理の効率化に役立ちます。
今回紹介したテンプレートを活用し、正確な経理業務と決算書作成に役立ててください。