これまで中小企業の給与管理や帳票設計を手がけてきたビジネス文書専門チームが、法令に準拠した賃金台帳テンプレートを無料公開します。

労働基準法で作成が義務付けられている賃金台帳は、社会保険・雇用保険の手続きや労働基準監督署の確認時に必要不可欠な書類です。

この記事では、日給・時間給・パート用まで対応したExcelテンプレートと、作成・管理のポイントをわかりやすく解説します。

賃金台帳テンプレート(Excel形式)

1か月単位で入力し、1年分を管理できるエクセル賃金台帳テンプレートを無料ダウンロードできます。

一般的な賃金台帳

小計欄と合計欄、控除や支給額を自動計算する賃金台帳テンプレートです。年度が変わった場合、ファイルをコピーして違う年度にすることで毎年に賃金台帳を作成することができます。

日給・時間給用

日給や時間給の契約になっている社員向けの賃金台帳テンプレートです。毎月の労働日数や時間を集計し、控除を計算することができます。

パート・アルバイト用

パートやアルバイト向けの賃金台帳テンプレートです。労働日数や時間を記録できるほか、残業代や手当なども計算することができます。控除は労働者によってことなるので、項目を自分で設定することができます。

業種別の賃金台帳テンプレート(無料ダウンロード)

現場に適した項目でそのまま使えるExcelテンプレートです。記入例つき・自動計算対応。

飲食店向け賃金台帳テンプレート(まかない控除・深夜手当)

飲食店向け(ホール・キッチン・アルバイト対応)
更新日:2025-10-13 対応:Excel 2013以降
主な項目(列)

  • 氏名/区分(社員・アルバイト)/職種(ホール・キッチン 等)
  • 勤務日数/総勤務時間/深夜勤務時間/残業時間
  • 時給/基本給(自動)/深夜手当/残業手当/交通費
  • まかない控除/その他手当/総支給額/控除合計/差引支給額
  • 備考(時給変更・シフト特記事項)

飲食店向け賃金台帳の特徴

  • 時給×労働時間の自動計算+深夜割増(22:00~)
  • まかない控除・日払い欄を標準装備
  • シフト表からの集計行を用意(連携しやすい列構成)

工場作業員向け賃金台帳テンプレート(残業・休日・深夜・能率給)

工場・製造ライン向け(派遣・期間工対応)
更新日:2025-10-13 対応:Excel 2013以降
主な項目(列)

  • 氏名/社員番号/所属ライン(組立・検査・出荷 等)
  • 稼働日数/実働時間/残業時間/休日出勤時間/深夜時間
  • 基本給/残業手当/休日手当/深夜手当/通勤手当
  • 能率給/生産手当/安全手当/総支給額/控除合計/差引支給額
  • 備考(欠勤・遅刻・早退)

工場作業員向け賃金台帳の特徴

  • 残業/休日/深夜の各割増を個別集計
  • 能率給・生産手当・安全手当の追加欄
  • 所属ライン・社員番号・欠勤/遅刻/早退の実務列

医療・介護施設向け賃金台帳テンプレート(夜勤回数・資格手当・処遇改善)

医療・介護向け(常勤・非常勤・夜勤専従対応)
更新日:2025-10-13 対応:Excel 2013以降
主な項目(列)

  • 氏名/職種(看護師・介護職・医療事務 等)/雇用形態
  • 所属部署/勤務日数/総勤務時間/夜勤回数/休日出勤回数
  • 基本給/夜勤手当/資格手当/処遇改善手当/通勤手当
  • 特別手当/支給総額/社会保険料/雇用保険/所得税/控除合計/差引支給額
  • 備考(シフト特記事項・資格更新)

医療・介護向け賃金台帳の特徴

  • 夜勤回数×単価、休日出勤回数の自動計算
  • 資格手当(看護師・介護福祉士 等)・処遇改善手当の専用列
  • 部署(看護課・介護課 等)・雇用形態(常勤/非常勤/夜勤専従)を明示

賃金台帳とは

賃金台帳は、社員・役員・アルバイトなど全従業員の給与支払い状況を記録する書類で、労働基準法(第108条)で作成義務が定められています。様式第20号を参考に必要項目を満たせば、縦・横どちらの形式でも作成可能です。

賃金台帳の作成は義務であり、労働基準法によって定められています。

賃金台帳の様式第20号フォーマット見本|労働基準法の必須項目一覧

引用:e-Gov 電子政府の総合窓口 様式20号

賃金台帳の必須項目と記入例

以下は、労働基準法上の必須項目です。また、入力時に迷いやすい「給与・賞与・手当・控除」の記入例を示します。

基本項目一覧

区分 項目 内容・例 必須/任意 実務メモ
個人識別 氏名 山田 太郎 必須 住民票表記に合わせる(異体字・旧字体の取り扱いに注意)
個人識別 性別 男/女 必須 マスタから自動反映可
期間 賃金計算期間 2025/09/01~2025/09/30 必須 締日・支払日と齟齬が出ないよう統一
勤怠 労働日数 20日 必須 有休・欠勤・特別休暇の内訳は勤怠原票で保持
勤怠 労働時間数(総勤務) 160.0h 必須 端数処理(0.25h=15分等)を就業規則に沿って統一
勤怠 時間外労働時間数 12.0h 必須 36協定の範囲内で管理、割増率計算と連動
勤怠 休日労働時間数 4.0h 必須 法定休日/所定休日を区別(割増率が異なる)
勤怠 深夜労働時間数 6.0h(22:00~5:00) 必須 夜勤のある業態で漏れやすい。自動集計を推奨
賃金 基本給 250,000円 必須 日給・時給・月給の別を明示
賃金 各種手当 役職 20,000/通勤 10,000 など 必須 名称と算定根拠を規程に合わせて定義
賃金 その他賃金 特別手当 5,000 など 必須 臨時・一時金は摘要で区別
控除 控除額 健保/厚年/雇保/所得税/住民税 必須 料率や月変・随時改定の反映漏れに注意
任意(推奨) 所属・職名・社員コード 営業一課/主任/A00123 任意 照会・監査対応の迅速化に有効
任意(推奨) 雇用形態 正社員/契約/パート 任意 割増・手当の適用判定に利用
任意(推奨) 標準報酬月額 300,000円 任意 社保手続・月変管理に便利
任意(推奨) 備考 時給改定:2025/10~等 任意 改定履歴・注意書きを簡潔に
実務チェック

  • 勤怠3区分(時間外・休日・深夜)は合算せず別列で管理(割増率と連動)
  • 控除は法定(健保・厚年・雇保・所得税・住民税)と任意(社宅・積立 等)を区別
  • 締日/支払日/賃金計算期間の整合を月次で確認

賃金台帳の記入例(給与・賞与・手当・控除など)

① 月例給与の記入例(モデルケース)
対象者 山田 太郎(正社員/営業一課/社員コード A00123)
賃金計算期間 2025/09/01~2025/09/30(締日:毎月末/支払日:翌月25日)
勤怠 労働日数 20日/総勤務 160.0h/時間外 12.0h/休日 4.0h/深夜 6.0h
支給(基本) 基本給 250,000
支給(手当) 役職手当 20,000/通勤手当 10,000/時間外手当 12.0h×1.25×時給=18,750(例)/
休日手当 4.0h×1.35×時給=8,100(例)/深夜手当 6.0h×0.25×時給=2,250(例)
総支給額 309,100(上記合計の例)
控除 健康保険 15,000/厚生年金 27,000/雇用保険 930/所得税 6,500/住民税 12,000
控除合計 61,430
差引支給額 247,670
ポイント

  • 時間外・休日・深夜は割増率(例:1.25/1.35/0.25)を別計算し、摘要に根拠を明記
  • 通勤手当の課税/非課税判定は社内規程と税制に合わせる
  • 端数処理(小数第何位で四捨五入等)を統一し、毎月のブレを防止
② 賞与(ボーナス)の記入例
対象者 山田 太郎(賞与支給日:2025/12/10)
支給額(総額) 500,000
手当 賞与加算(評価) 30,000/特別加算 20,000
控除 健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税(賞与税率)
差引支給額 (支給総額−控除合計)を算出
ポイント

  • 賞与は賞与用の社保・税率で控除計算(標準報酬・賞与額の上限にも注意)
  • 業績加算・特別加算などの名目は摘要に明示
  • 月例賃金とは別管理(賃金台帳上は同一人の支給実績として累積把握)
入力前チェックリスト

  • 締日・支払日・賃金計算期間が就業規則と一致している
  • 時間外・休日・深夜の区分と時間数が勤怠原票と一致している
  • 割増率・控除率・住民税額が最新(改定反映済み)
  • 改定(昇給・時給変更)は適用開始日を備考に記録

作成時の注意点とよくある失敗

  • 必須項目の記載漏れ
    労働基準法で定められた項目(氏名・性別・労働日数・労働時間・賃金計算期間など)が欠けていると、法令違反となる可能性があります。特に残業時間や休日労働時間は漏れやすいので注意が必要です。
  • 控除計算の誤り
    社会保険料・所得税・住民税などの控除額を誤って入力すると、給与額が不正確になり、後日修正や差額支給が発生します。エクセルの自動計算式を活用する場合も、控除率や計算式の設定ミスに気を付けましょう。
  • 年度切替の管理ミス
    新しい年度になっても前年のファイルを上書きしてしまうケースがあります。過去の賃金台帳は労働基準法で3年間の保存義務があるため、必ず年度ごとにファイルを分け、フォルダやファイル名に年度を明記して管理してください。

よくある質問(FAQ)

賃金台帳はいつ作成する必要がありますか?
給与支払いごとに作成します。月給制・日給制に関わらず、支払いが発生した月には必ず作成してください。
電子データのみで保存できますか?
可能ですが、法的要件を満たす保存形式とし、必要に応じて紙で出力できるようにしておくことが推奨されます。
パートやアルバイトも対象ですか?
はい。雇用形態を問わず全従業員分の賃金台帳を作成する必要があります。
手当や給与条件が変わった場合の更新方法は?
従業員の手当が変更になった場合、それが次の給与計算に反映されるように、すぐに賃金台帳を更新します。これは、基本給、ボーナス、またはその他の給与要素が変わった場合でも同じです。
賃金台帳はどのように社員に提供すべきですか?
賃金台帳は通常、給与支払い時に社員に提供します。これは、紙の給与明細書や電子的な給与明細書でも構いません。電子版は、通常メールや給与管理システム経由で提供します。
賃金台帳に「賞与(ボーナス)」はどのように記載する?
賞与や臨時給は他の給与項目と分けて、それぞれの金額と合計額を明記します。必ず「賞与」「臨時給与」として別欄や行を設けて記載してください。
賃金台帳の「社員コード」や「部署名」は必要ですか?
法令上は必須ではありませんが、社内管理や照会を円滑にする目的で「社員コード」「部署名」を記載する企業が増えています。業務上必要に応じて記入しましょう。
年の途中で賃金台帳の項目名を変更した場合の注意点は?
項目を変更した場合は、変更履歴が分かるようにし、必要に応じて備考欄に変更日や理由を記載すると良いです。年度ごとにフォーマットを見直すのも有効です。
賃金台帳は役員や派遣社員も対象ですか?
はい。正社員だけでなく、役員や派遣社員、パート・アルバイトなど雇用形態を問わず全従業員分の賃金台帳を作成・保存する必要があります。
時給が複数ある従業員の賃金台帳の書き方は?
複数の時給体系がある場合は、それぞれの勤務区分ごとに労働時間と賃金を分けて記載します。例:「通常時給」「残業時給」「深夜時給」などに分けて管理してください。
交通費や住宅手当など「非課税支給額」はどこに記載すればいいですか?
非課税手当も「通勤手当」「住宅手当」など名称を明確にして項目ごとに記載します。非課税分と課税分が分かるよう明細を分けるのが一般的です。
賃金台帳の保存形式は紙と電子どちらが推奨されますか?
どちらでも法的に認められていますが、電子保存の場合も必要な時に印刷できる形で保存してください。管理や検索の観点から電子データでの保管が主流です。
厚生労働省公式テンプレートとの違いはありますか?
厚生労働省の様式は法令に基づいた最低限の項目となります。民間テンプレートでは管理しやすいように追加項目や独自のレイアウトが採用されることがあります。
他社ソフトで作成した賃金台帳のデータを取り込むことはできますか?
多くのExcelテンプレートやソフトはCSVなどの形式で入出力が可能です。使用中のサービスが対応フォーマットをサポートしているか確認のうえ、取り込みましょう。
年末調整や労務監査の際、賃金台帳はどのように使われますか?
賃金台帳は年末調整や社会保険・税務監査時に基礎資料として利用されます。従業員ごとの給与支給額や控除額を確認するため、正確・漏れなく記載しましょう。

まとめ

今回はエクセル版の賃金台帳テンプレートの書き方とフォーマットなど紹介しました。

賃金台帳は法的に作成が義務付けられていますが、社会保険の加入時や労働基準監督署でもチェックされるため、かなり重要な書類といえます。

社会保険への加入は、今後も一層厳しくなってきたので、1人社長や小規模な会社であっても賃金台帳を作成して管理しておかなければなりません。