アンケート結果は、整理しないと単なる数字やまとまりのない意見が多く見てもなかなか全体像を把握できません。

筆者は業務で顧客満足度調査やNPS、商品満足度、セミナーアンケートの報告書を多数作成してきました。この記事では、現場で評価された構成、グラフ選定、クロス集計や自由回答の要約方法まで、実務でそのまま使えるように解説します。

本記事の対象と前提

この記事ではアンケートの結果を集計・分析し、施策へつなぐ報告書に特化します。業務日報や作業報告書、事故報告書、調査企画書などの事実経過の報告計画の立案は対象外です。

また「アンケート用紙(設問票)」自体のテンプレートは関連記事でご案内します。

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アンケート用紙テンプレート

アンケート結果報告書テンプレート(サンプル付き)

広告効果測定、顧客満足度、イベント満足度などで使えるテンプレートです。調査名、目的、対象、方法、回収状況、設問別結果、クロス集計、自由回答要約、要因分析、結論・施策案、次回アクションの構成になっています。

アンケート結果報告書テンプレートの表紙と目次(構成例:目的・対象・方法・回収率・設問別結果・クロス集計・自由回答要約・結論と施策)

 

アンケート結果報告書とは

アンケート結果報告書とは、アンケートで得たデータを整理し、意思決定に必要な結論と施策案を入れた文書です。

「誰に」「どんな方法で」「どれくらいの数を集めたか」といった前提を書き、質問ごとの答えを整理し、満足度などの数字の変化を確認します。

調査報告書の書き方

調査報告書は、単に調査で得た数字を羅列するだけでなく客観的にデータを整理する必要があります。また、どんな調査をどんな目的で行ったかという概要を記載することで、一目で調査の概要を把握することができます。

アンケート結果報告書の構成と書き方

1. 表紙・サマリー(エグゼクティブサマリー)

5〜10行で結論と推奨アクションを先に提示します。背景や手法の詳細は後段に回し、意思決定者が最初の1ページで全体像を把握できるようにします。

2. 調査概要

調査名(タイトル)
何を明らかにするための調査か、対象商品名や期間を入れて明確にします。

調査目的
仮説や検証したい指標を簡潔に記載します。例:値上げ後の満足度低下の有無を確認します。

調査対象
年代、性別、購入有無、居住エリア、会員区分などのスクリーニング条件を明記します。

調査方法
ウェブ、対面、郵送、会場調査など。調査期間、配信数、回収数、回収率、重み付け有無を含めます。

有効回答・母数
有効サンプル数(n)を設問ごとに記載します。フィルターによりnが変動する場合は注記します。

3. 主要指標サマリー

満足度、NPS、再購入意向、推奨意向、継続意向などKPIを一覧化します。前回比較や目標値とのギャップも併記します。

4. 設問別結果(単純集計)

各設問の分布を棒グラフや円グラフで示します。項目数が多いときは上位・下位項目に絞り込みます。

5. クロス集計と差の検定

性別×満足度、年代×推奨意向、購入頻度×不満要因などでクロスします。必要に応じてカイ二乗検定、t検定などの差の有意性を注記します。

6. 自由回答の要約(テキストマイニングの要点)

頻出語、共起語、ポジ・ネガ分類、代表コメントを提示します。生の引用は要点を保ったうえで匿名化します。

7. インサイトと原因仮説

集計結果から読み取れる要因を仮説として整理します。例:配送遅延が定期便の継続意向を押し下げています。

8. 結論・施策案・優先度

優先度、期待効果、コスト、リードタイム、担当を明記します。短期施策と中長期施策を分けると実行に移しやすくなります。

9. 次回に向けた改善(設問・配信設計)

設問の冗長削減、選択肢の粒度調整、サンプリングの偏り是正、回収率向上策を記載します。

グラフ選定とデータ品質の基本

アンケート結果をまとめるときは、ただ数字を並べるよりもグラフにしたほうが分かりやすくなります。ここでは初心者の方にも分かりやすいように、グラフの選び方とデータの扱い方の基本を紹介します。

グラフ選定の目安

・割合を比べたいとき
→ 棒グラフが分かりやすいです

・時間の変化を見せたいとき
→ 折れ線グラフが適しています

・全体の内訳を示したいとき
→ 100%積み上げ棒グラフがおすすめです

・満足度など「賛否の分布」を見せたいとき
→ ダイバージング棒グラフが効果的です

・円グラフは3〜5項目までに絞ると見やすくなります

指標の扱い

・満足度(5段階評価)は平均値だけでなく「とても満足+満足(Top2Box)」や「不満+とても不満(Bottom2Box)」の割合も示すと理解しやすいです
・NPS(ネットプロモータースコア)は「推奨者%−批判者%」で計算します。報告書に計算式を添えると親切です

信頼性の表記

報告書には次の情報も添えると、数字に根拠があると伝えられます。

・回答人数(母数)
・回答率(回収率)
・欠損(無回答)があるかどうか
・重み付けをしたかどうか
・自由回答をどう抽出・整理したか

さらに詳しく伝えたいときは、信頼区間や統計検定の結果を脚注に入れると専門的にも信頼されやすくなります。

記入例(要約版)

アンケート結果報告書は「数字の結果」だけでなく、「そこからどんな結論を出せるか」「次に何をすべきか」を書くことが大切です。ここでは一例として、分かりやすい要約の形を紹介します。

結論
配送にかかる時間(リードタイム)が、顧客満足度や継続して利用したい気持ちに大きく影響しています。倉庫を増やして配送を早めれば、満足度(Top2Box)が5ポイント改善する見込みです。

推奨アクション(90日計画)

1. 出荷の締め切り時刻を早め、配送方法を増やす
2. 配送に関する問い合わせを減らすため、FAQページの整備や自動音声案内の改善を行う
3. 定期購入の利用者に対して、万一遅れた場合に使えるクーポンを試験的に導入する

よくあるNGと回避策

アンケート報告書を作るときに、初心者がやりがちな間違いと、その避け方をまとめました。

NG:平均値だけで判断する
→ 回避策:「とても満足+満足(Top2Box)」や「不満+とても不満(Bottom2Box)」の割合も示し、中央値も確認します。

NG:クロス集計の人数(n)が少なすぎる
→ 回避策: 比較や分析をする前に「最低◯人以上(例:n≥30)」といった基準を決めておきましょう。

NG:自由回答をそのまま全部載せる
→ 回避策: 似た意見をカテゴリごとにまとめ、代表的なコメントだけを載せるようにします。

よくある質問(FAQ)

アンケート結果報告書テンプレートとアンケート用紙テンプレートは何が違いますか?
アンケート用紙テンプレートは設問票として質問を集めるためのものです。一方、アンケート結果報告書テンプレートは集めた回答を整理・集計し、グラフや考察をまとめるための文書です。
アンケート結果報告書テンプレートはExcelだけですか?
基本はExcel形式で提供しています。集計やグラフ作成が簡単に行えるためです。必要に応じてWordやPDFに変換して利用することも可能です。
自由記述の回答はどのようにまとめればよいですか?
似た内容をグループ化し、頻出意見や代表的なコメントを抜粋する方法が一般的です。個人情報は必ず匿名化してください。
報告書には必ずグラフを入れるべきですか?
必須ではありませんが、数字だけでは分かりづらいため、主要な設問結果や推移をグラフ化すると理解が早まります。
報告書の書き方で特に注意すべき点は何ですか?
調査の目的や対象など前提条件を明記したうえで、結論や今後の改善策を簡潔に示すことが大切です。結果の羅列に終わらせず「何が分かったか」をまとめるようにしてください。

まとめ

調査報告書の書き方やテンプレートについて紹介しました。

調査報告書は、調査の結果に基づいた結果が見てすぐにわかるように、ポイントを押さえて簡潔に作成する必要があります。

項目や書き方は、ある程度決まっているのでテンプレートを参考にしながら簡潔で見やすい調査報告書を作成してください。