このページは「誓約書の書き方・条文設計・注意点」を紹介しています。
個人間の金銭トラブル、夫婦・家族関係の再構築、接近禁止といった場面で、当事者間の合意を確実に実現し、将来的な紛争を避けるための手順を解説します。
※本ガイドは一般的な情報提供を目的としています。重要案件や高額紛争が想定される場合は、専門家の確認をご検討ください。
このページの位置づけ(配布テンプレとの違い)
誓約書の法的効力は、「何を」「どれだけ具体的に」記載するか、そして「証拠」としての信頼性をどれだけ高められるかによって、大きく変わります。市販やウェブで手に入るテンプレートは「雛形」としては便利です。しかし、このページは、その一般的な雛形を、あなたの具体的なケースに合わせて法的効力(実効性)が最大限に発揮できるように「強化・カスタマイズ」することに焦点を当てています。
- 配布ページ:
目的別テンプレートのDLと記入例(最短で使いたい方向け) - 本ページ:
条文の設計手順/無効になりやすい表現の回避/印紙・電子署名・証拠化
テンプレ配布ページのリンク
具体的なテンプレートは以下の配布ページで紹介しています。
誓約書の基本構成と必須項目
誓約書の基本は「誰が/いつ/何を/どの範囲・期間・場所で/破ったらどうする」を明確に書くことです。以下の必須5要素と、表現の直し方を押さえれば、実効性が大きくアップします。
必須5要素
- 作成日(締結日)
西暦で明記(例:2025年11月4日)。改訂や更新の基準日にもなるため本文直上に置くと判別しやすい。 - 当事者の特定
氏名(法人は正式名称)・住所(法人は所在地)・連絡先
例:甲(住所:東京都○○ 区… 氏名:山田 太郎)/乙(株式会社△△ 所在地:… 代表者:…) - 具体的義務(何を・どのように守るか)
曖昧語を避け、行為+条件+基準値で定義
例:乙は、業務上知り得た機密情報を第三者に開示しない。 → 「機密情報」=別紙1に定義。期間=退職後2年。 - 違反時の扱い
違約金・損害賠償・是正措置・連絡窓口・期限の利益喪失など
例:違反した場合、甲は乙に対し金○円の違約金を請求できる。 - 署名押印(本人同意の証拠)
直筆署名+押印が望ましい。法人は代表者職名記載
例:2025年11月4日/住所:…/氏名:…(署名)印
表題 → 前文(趣旨) → 条項(定義→義務→期間→違反時→雑則) → 日付 → 署名押印 → 別紙(定義・範囲・図面等)
文体・表現ルール
効力を弱める表現は使わず、必ず数値や固有名で具体的に記載します。
| 悪い例(曖昧) | 良い例(具体化) | ポイント |
|---|---|---|
| できる限り努力する | 毎月末日までに金○円を支払う | 行為+期限+金額 |
| 常識の範囲で連絡しない | 電話・メール・SNS・対面を含む一切の連絡を禁止する | 手段を列挙 |
| 近づかない | 自宅・勤務先・学校の半径100m以内に接近しない | 距離+場所特定 |
| 適切に管理する | 資料は施錠保管し、権限者のみにアクセス権を付与する | 具体的行為に分解 |
| 一定期間 | 2025年11月4日から2027年11月3日まで | 開始日+終了日 |
- 定義の別紙化:
「機密情報」「関係者」「施設」などは別紙で網羅的に定義→本文は簡潔に。 - 範囲の地図化:
接近禁止・立入禁止は平面図や地図の添付で誤解を防止。 - 更新・失効の明示:
自動更新/解除条件/失効日を条文化。
署名・押印・証拠性
誓約書や合意書の「証拠としての強さ」 は、主に以下の要素で評価されます。
- 署名方式:
自筆署名が基本・実印+印鑑証明:
本人性が最も強い(高額・重大案件向け)・認印/拇印:
補助的。理由があれば拇印も併記・電子署名:
タイムスタンプ・署名ログを保存(方式を条文化) - 身分証の写し:
運転免許証等の種別・最終4桁など、必要最小限で一致確認。写しの管理方法も記載。 - 立会人・証人:
第三者の署名欄を設け、氏名・住所・連絡先を記載。利益相反のない人物が望ましい。 - 調印手順の記録:
署名日・場所・方法(対面/オンライン)、身分確認手段、説明事項、合意経緯のメモを保管。 - ページ改ざん対策:
契印(割印)、ページ番号(1/3, 2/3…)、末尾に通し枚数・別紙の有無を記載。
本誓約書は、甲乙が内容を相互に確認のうえ、2025年11月4日に東京都○○区…にて調印した。
乙の本人確認は運転免許証(下4桁1234)により行い、写しは甲が施錠保管する。
本書は全3頁および別紙1(機密情報の定義)から成り、各頁に契印を施す。
条文設計の基本フレーム
誓約書は決まった流れで構成すると読みやすく、抜け漏れを防げます。以下は用途を問わず有用な最小の構成とサンプルです。
目的条:合意の趣旨を1文で明示
最初に合意の範囲と目的を一文で特定します。(冗長な背景説明は不要)
本誓約書は、甲乙間の取引に関連して、情報管理および関係者の安全確保を目的として、乙の遵守事項等を定めるものである。
- 目的は名詞1〜2個に圧縮。(例:情報管理/安全確保/再発防止)
- 適用範囲(本契約/関連業務/施設利用)の言及を入れる。
義務・禁止条:行為を具体化(手段/場所/距離/期日)
「誰が何をしない/する」を行為+手段+場所/距離+期限で具体化します。
1. 乙は、業務上知り得た機密情報(別紙1参照)を、期間中および終了後2年間、第三者に開示又は漏えいしてはならない。
2. 乙は、甲または甲関係者の自宅・勤務先・学校の半径100m以内に接近しない。
3. 乙は、甲に対する一切の連絡(電話・メール・SNS・メッセージアプリ・対面)を行わない。
4. 金○円の支払義務を認め、毎月末日までに各回○円を指定口座へ振り込む。
- 禁止の手段列挙(電話・メール・SNS・対面)で逃げ道を塞ぐ。
- 場所・距離は具体値(○m)+対象施設名で特定。
- 金銭義務は金額・回数・各回金額・支払日・振込先まで条文化。
期間・有効期限・更新
開始日・終了日・自動更新・解除条件の4点を明確化します。
1. 本誓約の有効期間は2025年11月4日から2027年11月3日までとする。
2. 期間満了の30日前までにいずれの当事者からも書面による異議の通知がないときは、同一条件で1年自動更新する。
3. 重大な違反がある場合、甲は催告なく本誓約を解除できる。
- 「一定期間」などの曖昧語は禁止。日付で特定。
- 自動更新の有無と通知期限を明示。
違反時の扱い:違約金/損害賠償/期限の利益喪失
実務で動くための金銭・是正・証拠化をセットで規定します。
1. 乙が本誓約に違反したとき、乙は甲に対し違約金 金○円を支払う。違約金は損害賠償請求を妨げない。
2. 分割金の支払を一回でも怠ったときは、乙は残額全てについて期限の利益を喪失し、直ちに弁済する。
3. 乙は、違反により生じた一切の損害(弁護士費用を含む合理的費用)を賠償する。
- 違約金は具体額(または算定式)「相当額」は避ける。
- 分割払いには期限の利益喪失を必ず入れる。
- 弁護士費用の扱いは文言で明示。
その他:守秘・準拠法・合意管轄・費用負担
締めの「雑則」で紛争処理・適用法・費用等を片付けます。
1. 甲乙は、本誓約及び交渉過程で知り得た相手方情報を第三者に開示しない。
2. 本誓約に関し紛争が生じた場合、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
3. 本誓約の準拠法は日本法とする。
4. 本誓約の作成・履行に要する費用は、別段の合意がない限り各当事者の負担とする。
5. 本誓約は、表題・別紙・付属資料を含め全○頁で構成され、各頁に契印を施す。
- 合意管轄は具体的裁判所名まで記載。(地裁/簡裁)
- 「別紙・付属資料」を本文に編入して通し頁数を明記。
最終チェック(抜けやすい論点)
- 目的が1文で言い切れているか。
- 義務・禁止に手段/場所/距離/期日が入っているか。
- 期間条に開始日・終了日・自動更新・解除事由があるか。
- 違反時に違約金・損害・期限の利益喪失が規定されているか。
- 準拠法・合意管轄・費用負担・通し頁数・契印の記載があるか。
ケース別の条文作成ガイド
ここでは代表的なケースについて紹介します。各ブロックを丸ごと流用し、【 】を実情に合わせて置換できます。
個人間(弁済/金銭)— 金額・期日・分割・遅延・印紙の検討
債務の存在を明確に承認し、支払方法・期日・遅延時の取扱い・期限の利益喪失条項を明文化します。また、契約の形式に基づき、収入印紙の貼付が必要か否かを確認します。
(債務の承認)
第1条 乙は、甲に対し金【○○円】の債務があることを承認する。
(支払方法)
第2条 乙は、前条金員を【一括/分割○回】で支払う。分割の場合、各回金【○○円】を毎月【○】日に、甲の指定口座【銀行名・支店・口座番号】へ振込送金する。振込手数料は【乙】の負担とする。
(期限の利益喪失・遅延損害金)
第3条 乙が支払期日に遅滞したとき、乙は残額全てについて期限の利益を喪失し、直ちに弁済する。遅延損害金は年【○%】とする。
(費用負担)
第4条 本誓約の履行に要した弁護士費用その他合理的費用は、乙が負担する。
- 差し替え:
【金額】【回数】【各回金額】【支払日】【口座】 - チェック:
分割の場合は「各回金額×回数=総額」を整合。端数は最終回で調整。 - 印紙検討:
弁済合意・金銭消費貸借等に該当する場合は課税区分を確認。
よくある失敗:「できるだけ早く払う」等の曖昧表現/期日だけで曜日未考慮/弁済口座未記載/遅延時の扱い不記載。
夫婦・家族(不貞/再構築)— 連絡禁止・再発時対応・慰謝料の扱い
事実認定は簡潔に記述。再発防止のための具体的な禁止行為と、違反時の対応を数値化して明確に規定します。さらに、第三者(相手方関係者)への連絡遮断も禁止事項に含めます。
(合意の趣旨)
第1条 乙は、甲との婚姻継続・関係再構築を目的として、本誓約に定める遵守事項を負う。
(連絡・接触の禁止)
第2条 乙は、【第三者氏名】に対し、電話・メール・SNS・メッセージアプリ・対面その他一切の連絡・接触を行わない。
(再発時の措置・慰謝料)
第3条 乙が前条に違反したとき、乙は甲に対し違約金 金【○○円】を支払う。違約金は、甲が別途被った損害(弁護士費用を含む)の賠償請求を妨げない。
(情報の保存)
第4条 違反の有無確認のため、甲は必要な範囲で通話履歴・SNSログ等の提出を乙に求めることができる。
- 差し替え:
【第三者氏名】【違約金額】(固定額推奨、算定式でも可) - 再構築の現実策:
家庭内ルール(帰宅時間・家計負担)を別紙で具体化し本文に編入(通し頁数・契印)。 - 表現注意:
「愛情をもって」等の感情語は避け、行動規範に落とす。
よくある失敗:
相手第三者を特定せずに「関係者一同」とぼかす/違反時の金銭が相当額表現/証拠保存の運用不備。
接近禁止・今後一切関わらない— 距離・場所・手段・第三者経由の禁止
対象者・場所・距離・期間・手段を定量的に特定し、第三者経由(共通の友人等)やSNSの間接連絡も禁止対象に含めます。さらに、違反時の違約金と記録保存についても規定することで、合意の実効性を強化します。
(接近・連絡の禁止)
第1条 乙は、甲(および甲の同居家族)に対し、電話・メール・SNS・メッセージアプリ・掲示板・手紙等いかなる手段でも連絡・接触を行わない。
第2条 乙は、甲の自宅・勤務先・学校から半径【100】メートル以内に接近しない。
第3条 乙は、第三者(共通の知人等)を介した間接的な連絡・接触の依頼をしてはならない。
(期間・違反時)
第4条 本誓約の期間は【2025年11月4日】から【2026年11月3日】までとする。
第5条 乙が本誓約に違反したとき、乙は甲に対し違約金 金【○○円】を支払うほか、甲に生じた一切の損害を賠償する。
第6条 当事者は、違反事実の立証のため、日時・場所・手段が分かる記録(GPSログ・監視カメラ映像・メッセージ履歴等)を証拠として用いることを確認する。
- 差し替え:
【距離m】【対象施設】【期間日付】【違約金】 - 距離の測り方:
「半径○m」+施設名で特定(自宅のみ→周辺施設に拡張可)。 - SNS網羅:
主要プラットフォーム名を列挙せず「SNS・メッセージアプリ等」で包括。
よくある失敗:
「一定期間」など曖昧期間/場所を市区町村単位で広すぎる指定→合理性欠如のリスク/第三者経由の抜け穴。
法務・税務の注意点
誓約書の効力や運用は、記載内容だけでなく、法的分類・印紙税・個人情報保護・労働関連法などの周辺ルールにも影響を受けます。本解説では、特に見落としやすい3つの分野について、その実務上の注意点を整理します。
収入印紙の対象判断(債務承認・弁済合意 等)
誓約書に金銭の授受や債務の承認が含まれる場合、印紙税法上の「課税文書」となる可能性があります。単なる意思表明や行動の誓約は非課税ですが、金額、弁済期、利息などを明記すると課税対象となり得ます。
- ✔ 金額を特定して支払義務を明記 → 「金銭消費貸借契約書」や「債務承認契約書」に該当する可能性
- ✔ 弁済方法・期日を定める → 「弁済契約書」に該当する可能性
- ✖ 罰則や違約金のみを規定し、金銭の貸借関係を定めていない → 原則非課税
税率の目安:
契約金額1万円を超える部分について、金銭消費貸借契約書等は1件につき200円(令和5年時点)。電子署名により完全電子化している場合は印紙不要です。
※印紙税の取扱いは契約類型により変動します。必ず最新の「国税庁:印紙税の課税文書一覧」を参照してください。
個人情報・秘密保持の条項化
誓約書で顧客情報・社員データ・業務上の機密を扱う際は、個人情報保護法や営業秘密管理基準を意識した条文が必要です。機密の定義と保護期間を明確にすることで、情報漏えい時の実効性が高まります。
(秘密保持)
第○条 乙は、本誓約および本件業務を通じて知り得た甲または第三者の個人情報・営業上の秘密を、目的外に使用し、または第三者に開示・漏えいしてはならない。
2 本条の義務は、本誓約の終了後も【2年間】存続する。
3 本条に違反した場合、乙は甲に生じた損害を賠償する。
- 定義の明確化:
「個人情報」「営業秘密」は別紙で具体的に定義。 - 期間の設定:
終了後も1〜3年程度存続条項を設ける。 - 目的外利用の禁止:
業務以外での閲覧・複製・持出しを明確に制限。 - 機密レベルの分類:
社外秘/限定秘/機密 等を区分管理する運用と整合。
実務TIP:従業員や外注者向けの誓約書では、別途NDA(秘密保持契約書)を併用するのが安全です。
労働関係(競業避止の相当性・就業規則との整合)
従業員・元従業員に対する誓約書は、労働契約法・憲法上の職業選択の自由とのバランスが求められます。特に競業避止義務を定める際は、過度な制限とみなされないよう相当性に気をつけてください。
(競業避止)
第○条 乙は、在職中および退職後【1年間】、甲と同種の事業を行う企業において、甲の業務と同一または類似の職務に従事しない。
2 本条は、甲が乙に対し、退職時点で相当の対価(例:月額○円)を支払う場合に限り効力を有する。
3 本条に違反した場合、乙は甲に対し損害賠償義務を負う。
- 期間:
一般的に「退職後1年以内」が目安。2年以上は制限過剰と判断されやすい。 - 地域・職種の限定:
「甲と同一業種」「同一取引先」「同一エリア」など、範囲を絞る。 - 対価の支払い:
制限の対価を明示すると実効性が高まる。 - 就業規則整合:
会社の就業規則・NDAと重複や矛盾がないか確認。
※競業避止義務を設ける場合は、労働契約、退職時誓約、就業規則の三つを整合させます。過度な制限は、無効と判断されるリスクがあるため、注意が必要です。
電子署名・電子保存の実務
誓約書を紙からデジタルへ移行する際は、本人性(署名者の確認)、非改ざん性(内容の保全)の確保、そして締結から保管までが大切です。ここでは署名方式、改ざん対策、運用フローを整理します。
署名方式(手書き署名/クラウド署名/当事者型)
- 手書きサイン画像貼付:
本人確認の裏付けが弱く証拠性が低い。緊急時の暫定運用に限定。 - 当事者型電子署名(ローカル証明書):
各当事者が自分の電子証明書で署名。PC環境依存が残る。 - クラウド署名(リモート署名):
署名鍵をクラウド保管し、本人性確認(SMS/メール/本人確認書類)+署名を一体運用。監査ログを含めやすく実務向き。
実務TIP:相手方が個人の場合はクラウド署名が手続きが簡単で再現性も高い。社内・協力会社間ではSAML/SSO連携で署名者特定を強化。
非改ざん性の担保
- ハッシュ値保存:
締結後PDF等のSHA-256を算出し、管理台帳に保存。
例:SHA256: 5f70bf18...c2f(先頭/末尾を管理台帳に記録) - 監査ログ:
誰が・いつ・どのIP/端末で・どの画面を操作したかのログを改ざん不可の形で保存。署名依頼送信/閲覧/合意/ダウンロードの各イベントを記録。 - タイムスタンプ:
締結時刻を第三者機関の時刻で時刻押し+封印。長期保存なら更新型タイムスタンプで有効性を延伸。 - 改版管理:
差し戻し・再締結の際は版番号(v1.0→v1.1→v2.0)を必須化し、旧版の保存と関連付けを行う。
第○条(電子署名等) 甲乙は、本誓約書を電子的方法により締結し、当該電子署名・タイムスタンプおよび監査ログをもって真正に成立した書面と同等の効力を有することを確認する。
2 本誓約書の最終版ファイルのハッシュ値(SHA-256)を管理台帳に記録し、改ざん検知の根拠とする
3 締結後の改変は無効とし、改定は新たな版として再締結する。
締結フロー(合意→署名→配布→保管)
- 草案・レビュー:条項確定、相手方の本人確認手段(SMS/メール/ID)を取り決め。
- 署名依頼:署名順序・期限・通知先を設定し送付。2要素認証を必須化。
- 署名・タイムスタンプ:全当事者の署名完了後、最終版に時刻押し。ハッシュ値を取得。
- 配布:自動配布メールに最終版PDF・ハッシュ値・監査ログ要約を添付/リンク。
- 保管:変更不可ストレージ(WORM相当)へ保存。権限は最小限、アクセスログを保存。
- 台帳管理:管理台帳に件名/相手方/日付/署名者/ハッシュ/保存先/保存期限を記録。
- 保存年限・破棄:保存年限(例:7年)と破棄手順(承認→消去証跡)を運用規程に明記。
- アクセス管理:案件単位のフォルダ権限。退職・異動時は自動剥奪。
- バックアップ:別リージョンに暗号化バックアップ。復旧訓練を年1回。
- 改定フロー:条文修正はレッドラインPDFで差分明示→承認→再署名。
※ 電子締結の有効性は、本人性の確認プロセスと完全な証跡保全が鍵です。クラウド署名に加え、二要素認証、監査ログ、タイムスタンプ、ハッシュ台帳で多層防御を講じてください。
証拠化・運用のコツ
誓約書は作成しただけでは不十分で、「証拠としての残存性」と「後からの否認を回避すること」が大切です。立会人の記録、送受信の証跡、版管理の3点を押さえることで、信頼性が大幅に向上します。
立会人・第三者記録(確認欄/チェックリスト)
- 立会人署名欄の設置:
本人同士のやり取りに加え、第三者(上司・弁護士・関係者)が「確認済み」と署名すると証拠力が向上します。 - チェックリスト方式:
内容確認・誓約理解・署名確認などの項目をチェック式で残すと、意思確認の過程が明確になります。 - オンライン立会:
Zoom記録や電子署名の「監査ログ」を利用し、日時と署名プロセスを第三者証跡として残す方法も有効です。
□ 内容を十分に理解した
□ 当事者の同意が確認された
□ 署名・押印を確認済み
□ 本人確認書類を提示済み
(立会人氏名・日付)
送付・受領記録(内容証明/メールヘッダ/スクショ)
誓約書の送付・受領段階でも証拠を残すことが重要です。特に内容証明郵便や電子メールの送信記録は、法的トラブル時に有効な補助資料になります。
- 郵送の場合:
内容証明+配達記録を利用し、「誰に・いつ・どんな内容を送ったか」を証明。 - メールの場合:
送信ヘッダ・日時・宛先をスクリーンショットで保存。PDF化して保管フォルダに格納。 - クラウド締結:
署名依頼/完了メールを転送保存し、監査ログと一緒に保管。
送付側・受領側の双方で「送信日時・受信日時・内容一致」の3要素を確保することがポイントです。
版管理・更新・再締結の手順
誓約内容を後から修正・延長する際は、単なる追記で済ませずに版管理を行います。改版履歴があれば、どの時点の、どの内容が有効であるかが明確になります。
- 改版方式:
版番号(v1.0→v1.1→v2.0)と改定日を明記。改定箇所は赤字・下線で可視化。 - 再締結:
重大な変更(期間・金額・当事者変更など)は新誓約書として再署名する。 - 保存ルール:
旧版は削除せず、フォルダに「旧版保管」「現行版」の区分を設けて履歴を維持。
seiyakusho_v1.0_20250101.pdfseiyakusho_v2.0_20251104.pdf(改定理由:期間延長、違約金条項変更 等)
テンプレ流用の手順と危険箇所
テンプレートを流用する際は、前提条件・登場人物・金額・期間・場所・違約条項などを必ず確認してください。例文の内容が残っていると、後日のトラブルの元になります。
差し替え項目の洗い出し(当事者/金額/期間/場所/違約金)
- □ 当事者の氏名・住所・法人名
- □ 契約・誓約の対象内容(業務/行為/金銭など)
- □ 金額・支払条件・期日
- □ 有効期間・解除条件
- □ 違約金や損害賠償の記載の有無
- □ 法的根拠・準拠法・裁判管轄
特に金額や住所の書き換え漏れは、異なる案件を使いまわしていると誤解されやすく危険です。自動入力テンプレを使う場合も、必ず目視で最終確認を行いましょう。
第三者レビュー・リーガルチェックの勘所
- 法務・顧問弁護士レビュー:
誓約が契約的効力を持つ場合は、条文の法的拘束力を専門家が確認。 - 社内二重チェック:
作成者・承認者・保存者を分けて、誤入力や日付ミスを防止。 - レビュー観点:
義務の片寄り・過度な罰則・無期限条項・他契約との整合性を重点確認。
締結前チェックリスト(最終確認)
印刷・電子締結いずれの場合も、送信・押印の直前に次の10項目をセルフ診断してください。いずれかに不備がある場合は、修正して締結します。
10項目セルフ診断
- 当事者特定:
氏名/住所/法人名・代表者名は最新・正式表記か(×別称・旧住所・旧社名) - 対象の具体性:
義務・禁止行為が行動/数量/場所/距離/頻度で特定されているか - 金額・期日:
総額・分割・各回期日・遅延時の扱い(損害金・期限の利益喪失)が明記されているか - 期間:
開始・終了・自動更新・更新/解除の手続きが明確か - 違反時:
違約金の水準・損害賠償の範囲・通知先・催告方法が現実的か - 場所・距離:
接近禁止等は住所・施設名・半径○m等がブレなく記載されているか - 整合性:
既存の契約・規程(就業規則、基本契約、NDA等)と矛盾していないか - 署名・押印:
自署の有無、実印/認印、社印、割印・契印、訂正印の運用は適切か - 証拠性:
本人確認資料、立会人欄、メールヘッダ/監査ログ、タイムスタンプ等を保存できるか - 印紙・法務・プライバシー:
印紙の要否、準拠法・管轄、個人情報・秘密保持の定義と期間は妥当か
よくある質問(FAQ)
監修・免責
一般的情報に関する注意・個別事案は専門家へ
本ページの内容は、法務・文書実務の一般知識に基づく解説であり、特定の案件に対する法的助言を目的としたものではありません。
個別の契約・誓約・紛争などの対応については、弁護士・税理士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
また、掲載情報は作成日時点の法令・実務をもとにしており、将来的な制度変更により内容が変わる可能性があります。
※当サイトは誤りのない情報提供に努めていますが、利用結果についての責任は負いかねます。あらかじめご了承ください。
まとめ
誓約書は、「誰が」「何を」「いつまで」「違反時の対応」を明示して初めて実効性を持ちます。曖昧な文面や抜け漏れを防ぐことが、後々のトラブルを避けるための最大のポイントとなります。
次のアクション:目的別の条文を選び、期日と違反時を具体化
- 本ガイドを参考に、目的別(個人間・夫婦・接近禁止など)の誓約書テンプレートを選ぶ
- 当事者名・期日・金額・距離などを数値と日付で具体化する
- 違反時の扱い(違約金・通知・損害賠償)を明確にする
- 署名方式(手書き・電子)と保存方法(PDF+監査ログ)を決定
具体的な条文例は、誓約書テンプレート集を参照してください。