就任承諾書は、選任された役員が「就任を承諾した」ことを明確にするための書面です。

商業登記(法務局)における会社設立・役員変更の申請で添付する書類の一つで、記載事項や日付の整合、押印の方法に不備があると補正になることがあります。

今回は、法務局の公開様式に沿ったひな形(Word)と、取締役・代表取締役など役職別の注意点、日付・押印・捨印の扱い、よくあるミスの回避方法まで、実務で迷いやすいポイントを分かりやすく解説します。

就任承諾書とは(基礎知識と使いどころ)

  • 目的:役員(取締役・代表取締役・監査役・理事など)が就任を承諾した事実の証明として保管・提出します。
  • 提出場面:会社設立登記、役員変更登記、代表取締役の選定・交代など。
  • 形式:法務局で案内されている様式に準拠した「ひな形」を使用すると補正リスクを下げられます。
  • 関連書類:株主総会議事録/取締役会議事録、就任承諾書、就任に関する印鑑証明書(必要に応じて)など。

取締役 就任承諾書のひな形(法務局準拠)

株主総会で取締役の選任が決議された後に提出する一般的な雛形です。法務局(商業・法人登記)の様式に沿ったフォーマットです。

取締役 就任承諾書 ひな形(法務局準拠)サンプル画像

就任承諾書の書き方(チェックリスト付き)

就任承諾書を正しく作成するための必須項目を、法務局の実務に沿って分かりやすく整理します。

  • 日付
    原則として「選任日」を記載します(株主総会決議日、または定款で任命した場合は定款作成日)。
  • 住所
    印鑑証明書の表記どおりに省略せず記載します(例:1丁目1番地1号)。
  • 氏名
    印鑑証明書と同一表記(旧字・外字を含む)で記載します。
  • 押印
    本人の実印を氏名後に押印します(案件により認印可否が異なります)。
  • 捨印
    任意です。不要でも差し支えありませんが、軽微な訂正に備えて押す実務もあります。
  • 会社名
    定款・登記事項証明書と同一表記で、略さず記載します。

就任承諾書 記載例(取締役・法務局提出想定)

記載例(書式イメージ・文章例)

就任承諾書

私は、貴社取締役に選任されましたので、就任を承諾いたします。

令和○年○月○日(選任日)
住所 東京都○○区○○一丁目一番地一号
氏名 山田 太郎 ㊞
株式会社〇〇〇〇 御中

役職別のポイント(取締役/代表取締役/監査役/理事)

取締役就任承諾書

  • 株主総会での選任決議と日付の整合が重要です。
  • 取締役会設置会社・非設置会社で添付書類が変わる場合があります。

代表取締役就任承諾書

  • 取締役の中から選定された「代表取締役」については、就任承諾書や選定を証する議事録の添付が求められる実務が一般的です。
  • 個人の印鑑証明書の添付要否は案件により異なります。提出先の指示に従います。

監査役就任承諾書

  • 監査役も選任決議とセットで就任承諾書の添付が求められるのが通常です。

理事就任承諾書(一般社団・一般財団)

  • 法人形態により様式・添付書類が異なります。所轄庁・管轄登記所の案内を確認します。

日付の書き方(「選任日」「就任日」「議事録」との整合)

議事録や定款との整合が最重要ですので、選任日・承諾日の扱いを間違えないように次の要点を確認します。

  • 基本は「選任日」を記載します。議事録の決議日と一致させます。
  • 決議当日に就任承諾が行われない場合は、提出先の指示に従い「承諾日」扱いとする運用があるため、事前確認が安全です。
  • 定款で任命した場合は「定款作成日」を用いる実務があります。

押印・印鑑証明書・捨印の扱い

受理可否に直結しますので、押印の種類や印鑑証明書の要否、捨印の可否を管轄の運用に合わせて準備します。

  • 押印種別
    実印が無難です。認印可否は管轄・案件によって異なります。
  • 印鑑証明書
    代表取締役の就任等では、個人の印鑑証明書の添付が求められる場面があります。
  • 捨印
    任意です。押さない場合は、訂正時に訂正印や差替えが必要になります。

「取締役・代表取締役を一枚にまとめる」場合について

就任書の原則は一人一通ですが、まとめる場合の補正リスクを理解したうえで最適な作成方法を選びます。

  • 複数名・複数役職を一枚にまとめると運用上不可となる場合があります。
  • 原則:一人一通の作成・押印を推奨します(補正リスクの回避、証明性の確保)。

よくあるミスと回避策

現場で頻出する誤りを洗い出し、すぐに実践できる回避策をチェックリスト形式で整理します。

  • 住所・氏名が印鑑証明書と不一致 
    → 旧字・外字の違いまで一致させます。
  • 日付の不整合(議事録とズレ) 
    → 決議日・承諾日の関係を確認してから記載します。
  • 会社名の略記・表記ゆれ 
    → 登記事項証明書・定款と同一表記で統一します。
  • 認印で押印して補正 
    → 実印が無難です。提出先の指示を事前確認します。
  • 様式の独自アレンジ 
    → 法務局準拠のひな形に合わせて記載順・文言を揃えます。

よくある質問(FAQ)

就任承諾書の「日付」は就任日ですか?選任日ですか?
一般的には「選任日(株主総会決議日など)」を記載します。定款任命の場合は定款作成日とする運用もあります。提出先の案内に従ってください。
捨印は必須ですか?
捨印は任意です。不要でも受理されますが、軽微な誤記の訂正に備えて押す実務もあります。
代表取締役の就任承諾書には印鑑証明書が必要ですか?
案件や管轄により異なります。代表取締役の選定を証する議事録と併せ、印鑑証明書の添付を求められることがあります。
取締役と代表取締役を一枚の就任承諾書にまとめてもよいですか?
証明性・補正リスクから、一人一通の作成が無難です。管轄により運用が異なるため、事前に確認してください。
Wordのテンプレートは編集しても大丈夫ですか?
氏名・住所・会社名・日付を差し替えて問題ありません。体裁や記載順は法務局の様式に合わせることをおすすめします。

まとめ

就任承諾書は、取締役が選任されたときに作成する書類です。役員への就任を承諾する意味でも重要で、会社設立時の登記や役員変更登記をする場合に法務局に提出するため必要になります。

就任承諾書の内容は、ほとんど決まっているのでテンプレートを使えばすぐに作成することができます。

書類に押印する印鑑については、取締役会を設置している会社と設置していない会社で実印(印鑑証明書要)か認印でいいのか異なるので注意が必要です。